ミャンマー国軍のクーデター【と失われる世界の人権】

【ミャンマー国軍のクーデターは何故今起きた?】

そして今後のミャンマーはどうなるのか?

 

ミャンマー国軍は2021年2月1日早朝、

議会召集の数時間前にアウンサンスーチー氏ら複数の政治家を拘束した。

今回のクーデターは、2011年の民主化以前、

抑圧的な統治で人民を苦しめた

軍事政権の復活を意味する。



アウンサンスーチー氏の率いる

与党・国民民主連盟(NLD)は、

2015年の選挙において

勝利を収めて以来5年、

2月1日より2期目に入る筈だった

民主政権の未来は儚く散ったのだ。

1962年の軍事クーデターから50年、

抑圧的な軍事政権を体験した

ミャンマー国民の心中を察するに

胸が詰まる。

ただ、国軍は2011年の

民主政権の発足以来も、

連邦議会の25%の議席を

国軍に割り当てられ、

国内最大の権力を有する

省庁を支配する権限も

憲法で保障されていた。

 

軍は依然として国内の権力を

強力に維持してきたのだ。

 

【なぜ本年2月1日にクーデターは起きたか?】

これには明確な理由がある。

(クーデターに気が付かず国会に続く道路のロータリー部分でエアロビクスを踊るキン・ニン・ワイさん)

 

軍の支援する連邦団結発展党(USDP)は

2020年11月の選挙にて

上院で11議席、下院で30議席と言う

圧倒的な少数派に転落した。

民主主義が定着しつつある国内で、
政治・経済を有する既得権益層である軍が、

強い警戒感を募らせたという事で間違いないだろう。

事実軍は「選挙での不正」を強く訴え、

「政治危機を克服するための介入」を糾弾し

1月27日、

軍の最高実力者【ミン・フライン将軍】が

まるでトランプ前大統領の様に 「憲法がないがしろにされている」と気炎を吐いた。

そしてその5日後、新政権の閣僚が初めて議会を開く予定だった 2月1日にクーデタを起こしたのだ。

 

【欧米がクーデターと認められない事情】

ミャンマー軍は緊急事態宣言を発し

1年間は軍による直接統治を行うだろう。

(軍がUSDPを通じて実質的に支配する構図)

しかしこの事態を欧米がクーデターと認める事は難しい。

欧米にはクーデター政権には経済援助を停止し 時には経済制裁を行う法律があるからだ。

そして今、再びミャンマーに経済制裁を行えば…

軍事的・経済的にミャンマーを支援する中国に ミャンマーがなびいてしまうからだ。

 

【ミャンマーを絡め取ろうとする中国の影】

ミャンマーにおける中国の経済的影響は 圧倒的に大きく、

国際通貨基金(IMF)の統計によると、

2018年段階で中国の対ミャンマー貿易額は約118億ドル、

金額的には世界1位で、2位のタイ(約57億ドル)を 大きく上回る。

そもそもミャンマーが軍事政権であった

時期から、ミャンマー・中国の関係は

おおむね相互依存的であった。

中国からミャンマーへの経済協力は、

1997~2006年の間だけでも

贈与2430万ドル、貸し付け4億6280万ドルに達していた。

米国や欧州連合から制裁を受けていた当時のミャンマーにとって

当時これは命綱とも言える圧倒的な援助額だった筈だ。

更に国連安全保障理事会に提出されるミャンマーへの非難決議にも

中国は拒否権を行使し、ミャンマー軍事政権を援護した。

ミャンマー軍事政権は中国に金銭上・外交上、大きな依存をしていたのだ。

民主化運動弾圧を理由に欧米から様々な制裁を受けていたミャンマーにとって

中国は、その国際的な立場を守ってくれるほぼ唯一の大国であったのだ。

もちろん中国にも利点はあった。

ミャンマーの豊かな天然資源は隣接する雲南省の経済開発にとって

重要なものであり、インド洋へのアクセスを可能にする地政学的な

メリットも大きかった。

以後ミャンマーは、様々な中国の支援と

投資を受け入れ、

中国はミャンマーを経由して

インド洋に直接アクセスする輸送路を

確保し、様々な天然資源を有利な条件で

獲得することができた。

特に、ミャンマーのラカイン州にあるチャウピューを起点に、

国土を南西から北東へと貫く天然ガスと石油のパイプライン敷設は、

中国にとって巨大な成果だった筈だ。

 

【アウンサンスーチーの方針】

2016年3月、

アウンサンスーチーを実質的な国家元首

とする政権は誕生した。

そして彼女が最初の外遊先に選んだのは他ならぬ中国だった。

2017年5月には「一帯一路」国際協力サミットフォーラムに、

同年10月には第19回中国共産党大会にも出席している。

その外にも「一帯一路」構想(BRI)

への協力を表明するなど、

軍事政権を支援した中国に対して

ミャンマー世論には反発もあったが

アウンサンスーチーは対中有効維持に関して

中国寄りという印象を強く国民にもたれない様注意しつつも その意地に腐心し、

親欧米路線に傾斜して中国から離反する事は無かった。

政権運営能力の未熟な

アウンサンスーチーにとっては

ミャンマーの置かれた地政学的な立場と、

国際的な条件を理解した上で

現実的なには他に選択肢の無い

止むを得ない判断であったのでは?

…とオタクダー的には思うのだ。

何しろ

1949年の中国共産党政権の成立を

最初に承認した非共産党国は

他ならぬミャンマーだったのである。

武装闘争を繰り広げていたビルマ共産党を、

中国共産党が水面下で支援していた 事を知りつつも、

当時から両国は外交的には友好関係を維持していたのだ。

増してや、

今や世界第2位の経済規模を誇る

中国と敵対する事は、ミャンマーにとって

非合理的な選択肢なのだろうと…

オタクダー的にはそう分析せざるを得ない。

【ロヒンギャ問題がミャンマーを中国寄りにする?】

(ハーグの国際司法裁判所で軍のジェノサイドを否定するアウンサンスーチー)

 

2017年8月25日、ミャンマー西部ヤカイン州北部で

30以上の国軍、警察施設が全ロヒンギャ救世軍(ARSA)によって襲撃された。

即座に国軍は掃討作戦を開始、その結果、戦闘から逃れようとする難民が大量に

隣国バングラデシュに流出した(70万人を超えたという)

した難民の大半がロヒンギャと呼ばれるムスリムであった。

(バングラデッシュからの帰還が進まないロヒンギャ難民)

 

これに対し国際世論はミャンマー国軍の掃討作戦は「民族浄化」だとして

ミャンマー政府を強く非難した。

批判を受けたアウンサンスーチーは2017年9月919日に会見を行い、

全ての人権侵害と不法な暴力を非難すると供に、

流出した難民がミャンマーに 帰還する為の

作業をすすめると発表した。

これは確かに、

ムスリムを忌避する仏教徒である

ミャンマー国民の大半が持つ

反イスラム感情と比べれば、

かなり穏健な発言だったものの、

人権や民主主義のイメージが強い

彼女の国際的イメージからすれば、

消極的な発言にしか見えなかった。

結果、民政移管後に改善しつつあった

ミャンマーと欧米諸国、 国際機関(国連)

との関係にも、大きな亀裂が生まれていた。

国際刑事裁判所(ICC)への告発に

向けた動きもあって、

欧米とミャンマーとの外交関係が

停滞していたのは事実だ。

一方で中国政府は、

ロヒンギャ問題について、

2017年11月にミャンマーを

訪問した王毅外相が、

同問題を解決する為の3ステップ

(秩序回復、ミャンマー・バングラデシュ間の交渉促進と

合意内容の履行、ヤカイン州の開発)を提唱し、

制裁をちらつかせる欧米とは異なる姿勢で擁護した。

 

【ミャンマーは再び中国と蜜月関係になるか?】

現在のミャンマー政府には、中国以外にも

多くの外交的オプションはある。

日本や韓国

アジア・ASEAN諸国を始め、

ミャンマーが中国寄りになる事を

望まない欧米各国も

現在は相当の援助を行い、

各国が民間投資も行なっている。

そして、ミャンマー政府や社会にも

反中感情と警戒心は存在する。

特に民衆にとっては、

軍政時代に軍事政権の圧政を

支えた存在として、

中国への一般的なイメージは

1990~2000年代に

大きく悪化している。

軍事政権が終わっても、

そのイメージは消えていないだろう。

特に中国からの過剰な借款の結果起きる

「債務の罠」に対する警戒は

ミャンマーでは市民レベルで高まっている。

それではミャンマーが

中国にすり寄る事は無いのか?

オタクダーはそうは思わない!

実生活に密接した飴と鞭を

巧みに使い分ける奸智は、

中国4千年の十八番では無いか!

それを忘れちゃあいけないと思う。

事実、中国政府はNLDを含めた

政党関係者やメディア関係者を

定期的に中国に招き

信頼関係の構築につとめているし、

中国の大学に留学する

ミャンマー人学生向けの奨学金を

大きく拡充するなど

裾野での人的交流も行い始めている。

民政移管までインフラ開発と資源開発の為

の投資がほとんどであった中国が

軍事政権との関係に配慮して

NLDやその他の社会組織と積極的に

接触しなかった 中国政府が、

対ミャンマー政策でこのような方向転換を

行っている事は見逃すべきでは無い。

軍事政権との癒着のイメージが強い

中国企業も、今や昔となりつつあるのか?

通信企業大手Huaweiが68万ドルを

CSR活動に支出するなど、

市場という視野でミャンマーをとらえ、

企業イメージの向上をはかっている中国。

バイデン政権下で確実に

対中経済制裁が緩和されるであろう

現状で 、再び中国が大資本で

ミャンマーを、

そしてその国民感情までもを

飲み込む事を、

単なる夢物語と、

無教養な暴論と、

笑い飛ばして良いものか?

オタクダー的にはそうでは無い

と、強く申し上げたく思う!

 

【バイデン政権下の中国】

バイデン大統領の登場で、

最も利益を得る国の一つが中国だ。

1月25日の記者会見を見ただけでも

米国が対中制裁を緩和

(撤廃もありうる)

する方針である事は明らかだ。

立場上、

口では何でも言うだろうが、

実行はしないだろう

と思える発言も 既に散見している。

台湾海峡問題もあいまいな言葉で濁し

増してや当事者同士で話し合えとまで

言い出した。  

ニューヨーク証券取引所(NYSE)も、

中国の大手国有通信会社、

  • チャイナモバイル(中国移動)
  • ャイナテレコム(中国電信)
  • チャイナユニコム(中国聯通)香港

についても、上場廃止措置

(トランプ大統領が進めていた)

を進める意向はないと 発表した。

これは明確な緊張緩和政策だ。

ロシア・イランと共に、

巨額な選挙費用を投じて

バイデン政権を生んだ中国が、

骨の髄までバイデン政権を しゃぶりつくし、

武力と経済力を使い、

再び覇権国家を目指して行く事は



もはや間違いない、

ミャンマーのクーデターは

世界の人権にとって

終わりの始まりに過ぎないのかも知れない。

  • 内モンゴルも
  • チベットも
  • ウイグルも
  • 香港も
  • 台湾も
  • 尖閣諸島も

50年後の地図には真っ赤に塗られているのか…?

 

(中国外務省から流出したと言う説もある2050年の国家戦略地図)

 

 

 

そう思うにつれ 「トランプが再選していれば…」と

嘆息するばかりのオタクダーであった。

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